意思決定と分析のプロセスの概要と「データ分析」の定義
「データ分析」があいまいなのが問題
「データ分析」という言葉はしばしば、集計や機械学習のような処理作業だけを指して使われがちだが、実際にはもっと広い範囲を含んでいる。
本来は、意思決定のために情報を得て活用するまでの一連の流れであり、単発の作業ではなくプロセスである。
注意点として、日本の「データ分析」では情報と企画を分けて考えていないことが多く、情報の話だけをしても混乱が増す危険がある。そのため、情報の前後の企画も含めて1つのプロセスとして捉えるのがよい。
意思決定と分析のプロセスを構成する8つのフェーズ
この「意思決定と分析のプロセス」は、大きく以下の8つのフェーズに分けて整理できる。すべてのフェーズがつながっており、どれかが欠けると機能しない。
また、関係者の役割や状況によって各フェーズにかかる負荷も異なるため、全体像を把握しておくことが欠かせない。
8つのフェーズの概略は以下の通り。
- 目的の決定:何を知りたいかを明確にする。ここが曖昧だとすべてが無駄になる。
- 要求:意思決定者のニーズを分析者が理解し、答える枠組みを設計する。
- 収集:必要なデータを手に入れる。現実には不足・欠損・汚れ・コストなど多くの制約がある。
- 処理:集めたデータを整形・加工する。まだ「情報」にはなっていない段階。
- 洞察:加工データをもとに理由や傾向を読み取り、意思決定に使える「情報」にする。
- 伝達:得られた情報を適切な形で届ける。内容以上に「タイミング」が鍵となる。
- 意思決定と実行:判断を下し、行動に移す。動かないという選択も含まれる。
- フィードバック:プロセス全体を振り返り、次回に活かす。ここまでやって初めて完結する。
本ガイドにおける「データ分析」「分析」の扱い
「データ分析」の意味は人や文脈によって異なるために誤読の危険がある。そこで、本ガイドにおける言葉の定義をする。
- 「データ分析」は「意思決定と分析のプロセス」全体を指す
- 「分析」は「処理」と「洞察」の両方を指す
「分析」を使う際にとりわけ注意すべきは、「処理」に偏って「洞察」が抜け落ちるケースである。たとえばダッシュボードの作成や数値の集計など、「何が起きたか」を並べただけでは、意思決定の材料にはならない。